檜原村探訪10: 神戸国際マス釣場の「国際」のルーツをたどったら一人の素晴らしい人物がいた #tokyo島旅山旅
神戸岩とならんで、東京に住んでいる人なら一度は聞いたことがあると思うのが神戸国際マス釣場です。神戸を「かのと」と読めないとてっきり「こうべ」なのかと思ってしまいますが、れっきとした東京の渓流でのマス釣場なのです。
しかし「国際」とは? これについてはずっと気になっていたのですが、今回通りかかった際におききすることができました。
うかがった時は、ちょうど台風後ということもあって河原が流れてしまい、補修作業中でした。美しい渓流ですが、家族でマス釣とバーベキューを楽しむ人のために安全な河原を作るためにこうして年に数回は手を入れているんですね。
ここにマスを放って釣ってもらい、その場でバーベキューできるので夏の楽しみに、釣りの練習に最適です。ふだんは予約なしで来ても大丈夫だそうですが、団体などには別の河原などを案内したりするでの、事前に連絡があるとなおよい対応ができるとのことでした。
食堂もあって、魚以外にも注文することができます。中央にはちょっと懐かしい感じの暖炉が。
そしていつも気になっていたこと、「神戸国際」の「国際」とは? 壁に情報がはりつけてありました。もともとはGHQの法務官トーマス・ブレークモア氏がライセンス制のフライ専用釣り場を開いたのが始まりで、進駐軍の保養施設として開業していたために「国際」という名前が付いているみたいですね。
なんと、このブレークモア氏の開業した法律事務所が今も続いているというので調べてみると、「ブレークモア法律事務所」英語名「Blakemore & Mitsuki」のページがありました。
ブレークモアは、1915年米国に生まれ、オクラホマ州に育ち、1938年米国オクラホマ州の弁護士資格を取得し、米国での弁護士業務のかたわら、英国ケンブリッジ大学で国際法を、東京帝国大学で日本法を研究しました。第二次世界大戦後再来日し、国務省、マッカーサー司令部の法務部において、それぞれ勤務し、1949年そのころあった外国人向けの司法試験に合格して、日本における弁護士活動の完全な資格を得、1950年に当事務所を設立しました。 (ブレークモア法律事務所、沿革)
あの厳しい時代に日本で法律を学び、日本で法律事務所を設立するとは、なんというひとだろう。すごい人物です。そしてとどめがこの沿革のページにうつっているこの写真。
しっかり釣りをしている写真じゃないですか。すばらしい。こういうの、本当にいいとは思いませんか。
きっと日本の自然をこよなく愛していた一人の人物の足跡が、こうしてマス釣場という形で残っていて、いまも大勢の人たちが楽しんでいる。法律家としての成功もめざましいものですが、こうして後世の人の幸せに触れる仕事を残せる。本当に見事です。
Wikipediaの英語ページも存在し、それによるとトーマス・ブレークモア氏は1987年には勲三等瑞宝章を受賞し、晩年は帰米し1994年に死去しました。彼の名前を冠するブレークモア財団はいまも東アジアの言語について学びたい人に助成金を出しています。興味のあるかたはそちらの略歴もぜひ。
奥さんのフランシス・ブレークモアは画家で、漫画家の長谷川町子とも親交があったというのですから、こちらもたどってみると面白そうです。伝記らしきものも発刊されていますし。あきる野市には彼の資料をあつめた場所もあるそうですので、これは見に行かねば。
神戸国際マス釣場の周囲にはロッジなどもありますので、夏の小旅行に、日帰りの釣り体験に利用されるのもよいかと思います。そのときには、ぜひこの自然を愛して、ここに足跡を残した彼のことを、少しだけでいいので思い出してあげてください。
「tokyo reporter 島旅&山旅」について
東京都の観光PR事業の招待で、東京都檜原村の取材をしています。tokyo reporter島旅&山旅についてはこちらのサイトを御覧ください。
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