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NASAが円周率を15桁目までしか使わない理由

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宇宙における軌道の計算に、円周率πはつきものです。では、何百億km先まで探査機を飛ばすNASA / JPL では、この円周率は何桁まで使っているのでしょう? 100桁? 200桁?

ほんの少しの違いが、あとでとてつもない誤差につながるのではないかと思ってしまうので、きっととても大きな桁数を使っているように思うのですが、答えは 3.141592653589793、たったの15桁です。

どうして15桁ほどで十分なのかという話題が、NASAの技術者によって説明されていました。実際の計算もしてみて、確かめてみたところ、なるほどたしかに15桁で十分だというのがわかります。

最も遠い探査機にあてはめて

この質問に答えたのは小惑星帯に存在する準惑星ケレスを探査している探査機 Dawn のチーフエンジニアのマーク・レイマン氏です。

これは大変いい質問だ。そして初めてきく質問というわけでもない。前にこの質問をしたのは6年生の宇宙科学ファンで、彼はのちに博士号をとって、宇宙探査に加わるという幸運にも恵まれた。彼の名は、マーク・レイマンという。

本人か!

氏は人類の作った探査機で最も遠距離まで到達したボイジャー1号を例に、円周率の桁数を説明します。サイトではマイルで表示されているのですが、これをメートル法に換算すると以下のとおりです。

まず、ボイジャー1号は、2015年に地球から約 130.239 天文単位、約 195億3600万kmの距離まで到達しました。これを半径とした円の円周を、15桁まで使った円周率 p1 と、14桁まで使っている円周率 p2 で計算したとします。すると、このようになります。

pi2

半径が195億キロの円周が、円周率の桁の15桁目があるかないかで 11.7216cm しか違わないのです。小数点以下15桁目目というのがどんなに小さい数字かを考えれば当然なのですが、印象よりはずっと少ない桁でよいのですね。

地球の半径、宇宙のスケールにあてはめると

同じことを地球半径で計算してみると、円周の誤差は15桁目を使うか使わないかで、せいぜい分子一個分の差にしかなりません。

では、宇宙のスケールに当てはめてみるとどうなるでしょうか。可視宇宙の直径は28Gpc = 930億後年、半径にして465億光年くらいといわれてますので、この数字を使います。

ここで逆に考えて、宇宙が球体だとしてその円周の誤差が水素原子程度になるためにどれだけの円周率の桁を使わないといけないかを逆算すると、39-40桁になるのだとのことです。

円周率は小数点以下13.3兆桁まで計算されているものの、現実的な物理世界の計算において必要になるのは、宇宙全体を相手にしたところでせいぜい40桁というのはすごい話です。

私もふだん仕事でプログラムのなかに円周率を機会がよくあります。まさか仕事で「π = 3」にはできませんが、せいぜい6桁しか使っていなくとも、それで十分というわけですね。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。

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