話題のAmazonのKindle合本セールって利益があるのか計算してみた
Amazonの Kindle ストアで、大幅な値下げを行っている合本セールが話題になっています。
たとえば平井和正の「幻魔大戦」全20冊合本版 9936 円が、90% オフで994円に、あるいは「角川インターネット講座」の全15巻合本、21600円が87%オフで2700円といったもの。ポイント還元もありますのでさらに安くなるといえます。
これって、どういう仕組になっているのでしょうか? 正確なところはもちろんわかりませんが、なんとなくの推測は立てられます。
原価のない品について、購入者を何倍にするかという方程式
「幻魔大戦」「角川インターネット講座」などは、買う人は買うのでしょうけれども、全部を律儀に買うひとは比較的少ない部類の本になります。特に1巻、2巻…と読み進めていると、最後まではなかなかいかないものでもありますね。
たとえば、500円の本が20巻刊行されていて、全部を購入した場合に10000円になるとします。でも、1巻を買った n 人のひと、全員が 20巻までいくことはなく、かなりきついカーブで逓減してゆくことが予想されます。
このカーブの形はいろいろだと思いますが、ざっくりと、1 巻を手にした n 人のうち 2 巻を手にするのが 0.8 n 人、3巻を手にするのが…としていった積分が 10 nに、つまりは平均で半分くらいまでは買い進めると仮定してみると、あわせて 5000 n 円の収入になります。ざっくりしているけど、まあ、そんなに外れてもいないかな。
そうすると、セールは次のような考え方になります。
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ふだん、1週間に x 人しかかわないシリーズを、1週間90%オフにして10倍のひとが買うだろうか?
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それだけのひとが買うための合本の価格は何円?
たとえば、「90%オフ!」の話題をききつけていつもの数十倍のひとが駆けつけて買うようなら、20巻のシリーズを1巻分の値段で売っても店としては得は得ということになります。20冊を1冊の値段で売っても、20倍の客がいるならバランスするということですね。
これ、紙の本ならば原価がありますので損になりますが、Kindle だという点もポイントです。電子だからこそできる種類のセールなんですね。
一方で、どんなシリーズものでもこれをやってよいわけではなく、こうした合本セールをしなければ買わない層が大きい古い本であるか、まじめな学術書であるかといった計算も入ってきます。
人気作品、たとえば「機動戦士ガンダム ORIGIN」の場合などは、数ヶ月に一回数冊ずつのセールを行い、続きを読みたいひとを誘い込むという戦略をとっているケースもあります。
物理的な実態がないからこその、価格と売り手、買い手の思惑。本当はもっと複雑な計算なのでしょうけれども、その入口を見るだけでも面白いものがあります。
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