アルバータ随一の美しさを誇る「モレーン湖」の深い青
かつて私は、ターコイズブルーの湖面をたたえるモレーン湖のほとりにいたことがあります。
カナダ、アルバータ州の見どころはロッキー山脈の雄大な自然ですが、その山に抱かれた氷河湖の魅力は格別です。そしてそのなかでも屈指の美しさを誇るのが、レイク・ルイーズからほど近い、このモレーン・レイク(モレーン湖)です。
モレーン湖の名前は、氷河の先端にできる岩山 = モレーンから来ていることからもわかるように、周囲を囲む氷河からきています。実際、この湖の水自体も氷河から涵養されているために6月にならないと水位は上がりません。そして水位があがった時、その美しさが花開くのです。
初日はあいにくの雨模様
モレーン湖に行った初日は、あいにくの雨でした。それでも湖面の青はみえるのではないかとコートの襟を立てて岩山を登っていきます。
周囲はロッキーの大森林が広がる雄大な景色です。各所からトレールが伸びていて、ここを起点にトレッキングを楽しむこともできます。
ふと歩いていると、足元にひだのような模様のついた岩があらわれます。看板によると、これはかつてここが海だったときにの波打ち際が堆積物のなかで圧縮されて化石となったもので「波打ち際の化石」という珍しい現象なのだそうです。その年齢は、ざっと5億6千万年。そんな歴史のかけらが無造作に転がっているわけです。
こちらも、あきらかに古い堆積層の地層。この付近が恐竜の化石などを多く産出する地方だということを思い出させてくれます。
岩山を登り、はるかに見渡すモレーン湖は、濃い青を湛えていました。遠景には「テン・ピークス」という峰々が雲に頂上を覆われています。これはこれで神秘的です。
晴れた日に、リベンジ!
次の日は一転して晴れの日。別の予定を済ませたあとで時間があったのでモレーン湖にもう一度足を伸ばしてみることにしました。
昨日とは比べ物にならないほどの燐光を反射する湖面に、言葉を失います。
きらめく、モレーン湖 from mehori on Vimeo.
単純な青ではなく、風がそよぐたびに湖面には小さな波が立ってそれが陽の光を何万もの破片にして瞬かせます。
近い浅瀬の薄い青から、遠くに小さな滝がみえるモレーンの端にいたる湖面の深い青まで、無限の階調が一刻一刻と変わってゆくさまは溜息なしには見られません。
この日はテン・ピークスもよく見え、湖面にはいくつかのカヌーも漂っているのがみえました。この下の浅瀬でカヌーを借りて、湖を満喫することも可能なようです。
モレーン湖でみられる小動物「ピカ」
晴れたモレーン湖では、かん高い動物の声もしきりに耳にできます。これは「ピカ」という、日本でいうところのナキウサギの親戚にあたる哺乳類で、岩山を飛び回るように走り回っています。
一瞬ネズミ?と思うのですが、もう少し大きなサイズです。おそらくこれは American Pika と呼ばれるピカの亜種で、アメリカ中西部のオレゴン州、ワイオミング州から、北はカナダのアルバータ州に分布している種です。
最近は温暖化の影響もあって生息地が少なくなり、絶滅が危惧されている種でもあります。
モレーン湖のピカ from mehori on Vimeo.
カメラを向けるとなかなか動いてくれないのですが、動画にもしてみました。
心ゆくまで湖の美しさを堪能して、ピカを撮影して、帰る時間になったのですが、やはりもうひと目、モレーン湖の色を目に焼き付けておこうと岩山のうえを走っていきました。
どんな美しい場所であっても、すぐにあとにしなければいけないのは旅の寂しさの一つです。どんな場所にも、ほんの一瞬しか立つことができない。だからこそ、この湖面をもう少しだけ眺めていたい。
そしていつかまた戻ってきたい。そう思うのでした。私はきびすを返して岩山を降りて行きました。
モレーン湖は、きっとこの夏もこの青を湛えて待っていることでしょう。
「かつて私は」シリーズについて
このシリーズは、以前旅をしたのですが、なかなか書ききれていなかった話題について掘り起こしをするエントリとなっています。
旅記事は本当は旅とともに臨場感をもって更新したほうがほうがよいのですが、なかなかそうはいきません。しかしもったいないので、時間がたってからでも、読める体裁に編集してお届けしています。それぞれの記事は公開後に対応する旅カテゴリに格納される予定です。