「忘れない 震災犠牲者の行動記録」の凄さと切なさ
データビジュアライゼーションの一人者である、首都大学東京の渡邉英徳研究室と、岩手日報社が共同で開発した「忘れない 震災犠牲者の行動記録」が公開されています。
これは岩手県において震災の犠牲となり、その行動の記録が親族などからの聞き取り、あるいは目撃情報から明らかになっている1326名について、地震発生から津波到達までの時間にどこにいて、どのように行動していたかを地図上にビジュアライズしているデジタルアーカイブです。
画面上の青い点は男性、赤い点は女性で、10分間における行動が軌跡となって表示されます。自動車などで移動していた人は、すばやく行動しているのに対して、歩いている人がゆっくりなのもわかります。そして、地震後に家の片付けをしていて一歩も動いていないという人も数多くみられます。
それぞれの点をクリックすると、人によっては名前と、詳細な情報も表示されます。この点の一つ一つが、地震の前までは普通に暮らしていた、私とあなたとなにもかわらない人々で、この数十分後には亡くなられたという事実に戦慄します。
しかも多くの人が、津波に耐えられない避難所にやってきて犠牲になったり、事情があって高台には移動せずに車で走っている間に流されたりしています。一つ一つの点に物語がありますが、俯瞰でみることによっても、学ぶことができるのです。
岩手日報ではこれらのビジュアライズの結果を元に、記事を複数発行しており、避難場所を過信せず、高台を目指すべきであるという重要な示唆を提示しています。
どうかこのデジタルアーカイブが、これらの地域の今後の防災の指針となることを、そして他の地域の参考になることを願ってやみません。