文化庁メディア芸術祭 大賞受賞の "Interface I" の拘束されたランダムさに魅了される
今年で第20回となる文化庁メディア芸術祭の受賞作品展報道関係者向け内覧会に参加しまして、数々の作品について制作者にお話をうかがうことができました。
今回大賞を受賞したのはドイツの Ralf Baecker 氏の「Interface I」。会場に入るとまず最初に目を引く、不思議な魅力をもった作品です。
192個の直流モーターによって駆動される縦糸によって、巨大なあやとりのように絡まる赤い糸が細かく脈動しており、全体が一つの生物のように、あるいは何かのグラフであるかのようにゆるやかに形を変えていきます。
細かい脈動は、ガイガー・ミュラー計数管、いわゆるガイガーカウンターによって計測されている自然界に存在する環境放射線のシグナルと結びついており、原理的にはランダムな過程になっています。
しかし実際の作品は縦糸だけではなく赤い横糸の拘束も受けていますので、ランダムなインプットから、組織だったゆるやかな変化も生まれてゆくところに、ランダムさを芸術として鑑賞可能な作品にするという発想があります。
ある場所が上昇し始めると「もっと上がれ」という気持ちでその場所に目が吸い寄せられたり、ある場所が下がり始めると「波打っているようだ」と感じて次の動きを期待するのですが、実際にはその通りに動いてくれません。
そして気づくわけです。そもそもこの動きをもたらしているのはランダムな背景放射線で、作品のなかには上下も、左右もありますが、それは本当のところ意味などなく、意味を見いだしているのは鑑賞者である自分だということに。
制作者のラルフ・ベッカー氏にもこのことを話したところ、それでいいのだという返事をいただくことができました。
私たちはこのモーターにつながれた赤い糸が「作品」なのだと思ってみてしまうわけですが、決して一瞬たりとも同じ形にならない作品の微妙な動きや、赤い糸が可視化している背後の無意味なランダムなシグナルに意味を見いだす私たちの心のなかに「作品」があるのだと考え始めると、視線が離せなくなります。
今回の会場は2箇所に分かれていて、NTTインターコミュニケーション・センター側の最初に展示してある作品ですが、まずここからたっぷりと時間をかけて鑑賞してみてください。
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会期:2017年9月16日(土)~9月28日(木)
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NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、東京オペラシティ アートギャラリー
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入場料:無料