東京湾の風の島、式根島のアウトドアを楽しむ (前編) [PR] #tokyo #tokyoreporter #tamashima #shikinejima
東京には都会を離れれば、山もあれば島もあります。そんな東京の隠れた魅力を発掘する「多摩・島しょ魅力発信事業」のリポーターとして、今回は式根島に派遣されました。
式根島は地図上でも浦賀水道から外洋にでてすぐ近く、新島の隣にある本州から近い島です。
徒歩ですべてを回ることが可能なほどよい大きさの島に、夏場は賑わう浜辺と、温泉がいくつもあるのが、式根島の見どころです。
しかしそれ以外にも、島の西側を中心にハイキングと絶景を楽しめるアウトドアコースもあります。今回は冬場の派遣ということもあって、こちらのアウトドアを中心に取材を行いました。
前編となるこの記事ではまず、島へのアクセスから、島のアウトドアコースについて、そして村の食事処やお世話になった宿についてご紹介したいと思います。
竹芝桟橋から夜の船旅
式根島へは東海汽船の大型客船「さるびあ丸」と、ジェットフォイルの高速船でゆく方法があります。ただし、冬場は波が高いこともあって大型客船のみ。
竹芝桟橋出港は夜の22時。天気にさえ恵まれれば、金曜日に出発して土曜日着ということも容易にできるのです。実際、金曜日のこの日は大勢の釣り客が島を目指して乗り込んでいました。
船の旅となると、船酔いが気になるというひともいると思いますが、「さるびあ丸」は大型の船ですのでそれほど揺れません。
また、2等和室を選べば、ざこ寝ではありますが船の一番下の揺れが小さい場所で休むことができます。1枚100円で借りられる毛布を2枚いただいて、簡易な寝床を作るのがおすすめです。
これから大島到着まで8時間、そこから利島、新島と寄港して、式根島に到着するのは翌朝の9時過ぎです。
翌朝、ゆっくりして目がさめるとすでに大島は寄港したあとで、ちょうど利島に到着したところでした。
大型客船には食堂も完備していますので、ここで朝食をいただきます。
ホットケーキとコーヒーのセットで800円。これですっきりと目がさめて到着の準備ができました。
式根島に到着。早速、プチホテル「ラ・メール」へ
9時に予定通り新島に寄港すると、いよいよその先に式根島が見えてきます。
ついてみてびっくりしたのが、なんと式根島の大型客船の接岸地点は海に向けて大きく開いています。
よく、天候が悪いときには新島までは頑張ることができても、式根島をあきらめて帰ってしまうことがあると聞いていたのですが、この構造だとそれも納得です。波があったら怖い!
到着して、すぐに身軽になるために宿に荷物を置きに行くことしました。
今回お世話になるのは、港から最も近いプチホテル「ラ・メール」です。目印になっているのは、島で唯一のこの信号のある交差点です。
宿の前まで来ると、まだ二月なのにすでに河津桜が満開になっていました。
「ラ・メール」は、食事付きのホテルと、別荘型の「アーリーバード」の二種類の宿を営業しているのですが、今回は冬場ということもあってこちらのホテル形式の部屋に泊まりました。
部屋に通していただいて驚きました。テーブル、キッチン、冷蔵庫も完備。
ベッドとソファ、バス、トイレもすべてついています。
まだまだ民宿が多い式根島で、このようにプライバシーやアメニティに注意した宿はまだ少数派とのことで、春先から夏の予約がどんどんと入るほどの人気なのだとか。
これは、一週間ほど逗留して原稿を書きたくなります…。
この日の式根島ハイキングルート
この時点で10:00ほどになっていたのですが、ここでこの日の行動を決めました。
着いたのが島の北側にある野伏港ですが、そこから島の西側半分を海岸線沿いにたどる遊歩道、地図上では赤い線のルートがあります(地図は式根島観光協会配布のPDFを加工しています)。
式根島は島全体が噴火で生じた流紋岩の一枚岩のようになっていて、海岸は基本的に絶壁になっています。
ですから、海水浴場に向かうたびに多少の高低差を階段で昇り降りする必要がありますが、それを除けば遊歩道はそれほど高低差があるわけではありません。
健脚なひとなら、ハイキング用の靴でまわれば2-3時間ほどで島を半周することができるはずです。
というわけで、地図から遊歩道入り口を探して、飛び込んでみました。
風成植生に注目したい遊歩道
遊歩道はよく整備されていましたので、道に迷うことはありませんでしたが、基本的にヤブのなかの一本道です。
すぐに、先ほどまで吹いていた風がやんで、遠くで波の音と風の音が低く鳴り響く、ひっそりとした森が広がります。
奇妙に曲がりくねった木々の姿は、長い時間をかけて風が生み出していた形のようにみえます。
式根島は、最も標高が高いところと残りの部分の差があまりありませんので、島のどこを歩いていても、こうした風の影響を木に、岩に、地形に見ることができます。
見上げればこのように風の影響で枝が片方だけに伸びた林が広がります。
島はどこだって風が強いものですが、これほどにも風景にそれが刻まれているのが、式根島を歩いていて強い印象を残しました。
リアス式海岸を一望する、神引展望台
プチホテル「ラ・メール」がある十字路付近からあるくこと30分ほどで、遊歩道の隙間から頂が見えてきました。
これが、島でも最も高い場所の一つ、神引展望台のある頂上です。
急に開けた岩場を抜けて、頂上を目指します。ふりむくと、あっと驚く風景が広がっています。
目の前に広がっているのは、カンビキ湾のリアス式海岸です。宿のオーナーが「写真で見るよりもずっとすごいよ」とおっしゃっていた意味が、目を射るように飛び込んできました。
絶壁の先にある深い海の碧さ、打ち寄せる波の白い飛沫が刻一刻と変わる様子、遠景にみえる新島との完璧な構図。こんな風景が東京の、目と鼻の先にあるのですね。
下を見下ろせば、湾の底なしの深い青。
海岸線に目を移せば、砕ける波と渦巻く海面の凄まじいこと、これは本当に一見の価値があります。
今回は、遊歩道側からアプローチしましたが、神引展望台には自転車や車で近くまでやってくることも可能です。
唐人津城(とうじんづしろ): 風化した地形の美しさを堪能する
さて、多くの人が神引展望台で引き返すのですが、今回は島のもっとも西の端の唐人津城まで行ってみようと思いました。
地図にも特に説明はありませんし、宿の人に聞いても「あそこには、なにもないですよ」とおっしゃっていたのが、逆に興味をかきたてます。
神引展望台から遊歩道をさらに20分ほど歩き、看板に「唐人津城」と書かれた入り口があるので向かってみると、たしかに何もない砂漠のような地形が広がっています。
津城(づしろ)は式根島の各地にある地名なのですが、これは城のことではなく、人や魚が集まる場所というほどの昔の言葉の名残なのだそうです。
道があるようでしたので、たどってゆくと、まるで違う惑星にいるかのような風化した地形が周囲に広がります。
足元がゆるく、崩れそうな高台の上までいってみると、明らかに人の手で作られた積石のようなものがあります。
しかし、すぐそこは絶壁の崖になっていますので、山歩きに慣れている、崩壊地形の挙動を知っている人にしかおすすめしません。
高台までいかずとも、唐人津城の見どころは、この豊かな風化地形です。もろくて崩れそうな岩のこの美しさ、風化業界的にもハイクオリティです。
これもいい風化…。唐人津城の岩はどれも足で踏みつけるだけで割れてしまいそうな、もろいものばかりです。
いずれは風と雨によって砂に戻ってしまうとはいえ、なるべく長くこれを楽しめるように、ここでは足の置き場には注意してあるきましょう。
絶壁に続く絶壁の、隈の井展望台
唐人津城まで歩いた人には、ここで分かれ道があります。近道を通って御釜湾に向かうか、さらに奥の、隈の井展望台を目指すかです。
隈の井展望台には、いくつかのベンチもありますので、ここでお弁当にするのもよいでしょう。どちらのルートを選ぶかで、約20分ほどの差が生じます。
そして展望台というからには…式根島だとやはりここも絶壁です。
ここの崖は特に崩れやすくなっていますので、ギリギリまではいかないように注意しましょう。
御釜湾の3つの展望台
遊歩道ルートも後半。ここからは島の南側に面した御釜湾に設置された三つの展望台を踏破していきます。
一見、崖続きで危なそうなのですが、遊歩道は海岸線からほどよい距離を縫うようにして走っています。
そしてところどころ、このように展望台がありますので、御釜湾に面した海岸地形や、波にくり抜かれた大穴を見ることができます。
海岸線だけでなく、後ろも振り向くことを忘れないでください。この奇妙に曲がりくねった風成の木の形は、式根島の歴史そのものなのです。
3つの展望台をめぐると、ようやく遊歩道は終わりです。途中急いで歩いたおかげもあって、10時スタートで、ゆっくりと写真をとりながら、ここまでで13時過ぎとなりました。
島中心部の食堂とお店
少し時間的には遅くなってしまいましたが、島の中心部ににはいくつかの食堂がありますので、昼食をとることは可能です。
今回訪問したのは中華料理ののれんが上がっている「上山」。でもこちらで評判なのは、カツ丼なのです。
島でカツ丼? と思うかもしれませんが、たっぷりのカツが乗った丼に冷風で冷えた体が温まります。タレもおいしいんですよこれが。
これ以外にも、定食の多い食堂「大師」や、個性的なラーメンを出す「サンバレー」などいくつか選択肢があります。
島で行動する際には、お弁当を頼むという手もあります。商店「みやとら」や、池村商店では、電話で注文するお弁当に対応しているので、食事のために戻ってくる余裕がないときなどは利用するとよいでしょう。
食堂にしても、商店にしても、予告なしに休みがはいったり、季節営業の場合もありますので、事前の電話が重要です。
プチホテル「ラ・メール」の夕食
この日の午後は島の主な海水浴場、温泉を回っていたのですが、それは後編の記事にゆずって、この日のプチホテル「ラ・メール」の夕食についてもご紹介したいと思います。
島にやってきても、意外に食べられないのが島の海産物や特産品です。
「ラ・メール」では、やってきた客が式根島の思い出を持ち帰れるように、意識的に島の産物や魚を取り入れた夕食を作るようにしているそうです。
こちらはブダイの「つっこし汁」。味噌汁に、魚の頭も骨もすべて突っ込むところからこの名前がついたそうです。
式根島の岩海苔とタコの和物。式根島の海苔は少し歯ごたえがあって、コリコリとした触感がくせになります。これは丼でも食べられる!
こちらはもともと八丈島の郷土料理の「島寿司」寿司種を醤油のたれに漬けて、わさびのかわりにからしで握るというのが特徴です。
昔、わさびが手に入りにくかった時代の工夫の名残が、こうした料理に残っているのですね。
こちらは、タカベの塩焼き。これも島の周囲でよく捕れる魚だそうです。
一見、肉団子のようにみえるこちらは、魚のすり身を揚げた「タタキ揚げ」。新島では、ムロアジやトビウオのすり身を「タタキ」というのだそうです。
これがまた、口にいれると独特の香ばしさが広がります。
この他にも金目鯛、デザートまでついてお腹いっぱいのコースです。
じつは「ラ・メール」では、二泊する客が飽きないように、洋食イタリアンのコースも用意しているそうです。
式根島でこんなフルコースの料理がいただけるとは、食を通して旅を記憶してほしいという、オーナーさんの強いこだわりを感じます。
式根島、おすすめの行動プラン
今回は取材ということもあってかなりの早足で踏破したのですが、二泊されるかたなどはもっとゆったりと回ってもよいでしょう。
たとえば夏場なら、島に到着したその日は海水浴を楽しみ、次の日にゆっくりとハイキングを楽しんでもよいわけです。
また、歩く自信がないという場合は、島にはたくさんのレンタサイクルの店がありますので、ここで電動自転車を借りて島を回ることもできます。
大人なら徒歩で回れる式根島ですが、お子様連れの場合は、この方法がよいでしょう。
さて、後半では、島の有名な海水浴場と、温泉のすべてをご紹介したいと思います。
[
](http://tokyoreporter.jp/) この記事は東京都「多摩・島しょ魅力発信事業」・「Tokyo Reporter 島旅&山旅」リポーターとして招待をうけて書かれています